脂質と疾患、または炎症と免疫

脂質はエネルギーとして利用されるだけではありません。免疫をコントロールして、摂取方法で病を促進したり、健康を維持したりもします。

皮膚炎、湿疹でお悩みの方、マーガリンをやめてみてはいかがですか?

ニュースを見ていたら、「マスク皮膚炎」なる言葉が出てきました。

コロナウイルス感染症の回避のために、ほとんどの方が外出時にマスクをされているかと思います。していない人を探すのに一苦労するくらいです。

大多数の方にマスクをしていただき、手洗いを徹底させることが、第二波・第三波にパンデミックを発生させないための、絶対必須条件です。

マスクが鼻と口の周囲の湿度を高め、ウイルスの侵入を防いでいるのですが、この湿気が裏目にでて、湿疹・皮膚炎が起きるというものです。

アクネ菌(ニキビ菌)、白癬菌カンジダなどいろいろな原因があげられますが、これらの細菌は常在していることもあって、リンパ球が働きにくくなかなか排除できません。そうこうしているうちに、血管が拡張したり(発赤)、じくじくしてきたり(浸潤)、痛くなったり(疼痛)かゆみがでたり、皮膚や粘膜がむくんできたりします。これらの反応は、顆粒球によるものです。

顆粒球とリンパ球は白血球の分類です

白血球のうち、直接細菌やウイルス、あるいは後日に記載するように、がん細胞を攻撃する進化した免疫反応である「獲得免疫」を担当するのがリンパ球で、外敵が来たときにおきる原始的な免疫反応を担当するのが顆粒球です。そして通常は、この二つは感染症に対し協力しあうように見えますが、実際は顆粒球による原始的な免疫反応「炎症」が、病原体をやっつける免疫反応を邪魔します。

ところが、感染症によっては炎症のほうが強く出る、「サイトカインストーム」や「アナフィラキシー」が起きます。これらは、激烈な反応で、特に呼吸器におきると、気管支やのどの粘膜がはれ上がり、空気の通り道が狭くなり、場合によっては命にかかわります。

免疫反応が、裏目に出て命にかかわる現象です。

この、顆粒球の働きである「炎症反応」をコントロールしているのが「エイコサノイド」という物質です。「エイコサノイド」による刺激は強いのですが、すぐに分解されて役割をもつ時間が非常に短いです(0.001秒単位)。

このエイコサノイド、大きく三つに分けるとわかりやすくなります。

一つは、「炎症促進」エイコサノイド、二つ目は「抗炎症」エイコサノイド、三つめは「中立性」エイコサノイドです。(名前は、略語と数の組み合わせで、誤解を招くことが多いので、あえて載せないようにします。)

このうち二番目の「抗炎症」エイコサノイドの原料がω3(オメガスリー)あるいはn3と呼ばれる脂肪酸です。いわゆる「血液サラサラ」の油脂ですね。

イワシ・サンマのEPA、マグロ、カズノコのDHAが有名ですが、アマニ、エゴマのαーリノレイン酸も一時ブームになりました。意外なものにクルミ、コーヒーにも多く含まれます。(ただし、コーヒーは抽出法に大きく左右され、エスプレッソやカフェラテのように、豆をそのまま加工しないと摂取できません。また、クルミは後述するリノール酸も多いので、食べ過ぎは禁物です。)

そして、「炎症促進」エイコサノイドの原料が、マーガリンをはじめとするに大量に含まれるリノール酸です。マーガリンの原料は、トウモロコシの油です。

米ぬかから採れる米油、大豆・豆乳から採れる大豆油、ゴマ油、ナタネ油、キャノーラ油、ピーナッツ(バター)も、含有比が高いのです。動物性のものでは、豚脂、鶏皮、羊肉にも高い含有比を持っています。

最後に、「中立性」エイコサノイドは、アーモンド、アボカド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツなどの木の実、果物などと、牛肉。牛乳・バター・チーズの含有比が高いですが、脂質が脂質だけに、取りすぎは肥満の原因になります。

炎症は長引くと、いろいろな障害を引き起こします。血栓動脈硬化の根本的な原因です。(賢明な読者ならお判りでしょうが、この「炎症性」エイコサノイドがあまりにも少なくなると、出血して血液が止まらないという事故が起きかねません。)

リノール酸が多く含まれる、マーガリン(菓子パンにも多く含まれています。)、豆乳(豆腐は、豆乳から大豆油を除いたものです。)、ごま油、サラダ油、ピーナツなどを避ける工夫が必要です。

特に、表ブログログイン - はてなにも書きました「静脈血栓」の予防には、まさにこの「炎症性」エイコサノイドの抑制がカギになってきます。

そして、マスク皮膚炎を引き起こしやすい方は、コロナウイルス感染症による「静脈血栓」も引き起こしやすくなっているおそれがあります。(「直結します。」と考えていただいてもかまいません。)

まず、食事をみなおしてください。